寒さが和らぎ桜咲き乱れる春は日本人にとってとても素晴らしい季節です。しかし今年は新型コロナウイルスの襲来により不安や不自由を強いられる日々となってしまいました。自粛規制が解けたとはいえ第2波の可能性もあります。一刻も早くこの事態の完全に収束することを願うばかりです。

今回はその様な中、1つのキーワードとなっているPCR検査についてのお話です。
PCRとは「Polymerase Chain Reaction」の頭文字をとったもので、和訳すると「核酸(DNAやRNAのこと)合成酵素連鎖反応」となります。ごく簡単に言うと、そのウイルスに特徴的な遺伝子配列を増幅させて目に見えるかたちにしてウイルスの感染があるかないかを判定する検査です。実際にはウイルスの感染が疑われる人の鼻の奥~喉から細胞液を採取し(インフルエンザの検査で長い綿棒を鼻の奥に入れられるのと同じやり方)、その検体にPCR技術による処理を加え、そのウイルスだけがもつ遺伝子の有無を判定します。特徴的な遺伝子配列が検出されれば陽性となります。

しかし、そこで問題となるのはPCR検査における「感度」と「特異性」です。「感度」とは実際に感染があるときに正しく陽性が出る確率を、「特異度」とは実際に感染がないときに正しく陰性が出る確率のことです。現在のPCR検査では検体の採取部位におけるウイルス量や感染からの経過時間による影響もあり両者ともに100%にならないのが現実です。特に「感度」は70%程度とされる場合があり、これは実際にはウイルスに感染している100人にPCR検査を行っても30人は感染していないという陰性の結果が出てしまうことになります(偽陰性)。また、「特異度」も100%には至らず、実際にはウイルスに感染していない100人にPCR検査を行っても1~数人は感染しているという陽性の結果が出てしまいます(偽陽性)。ややこしい話ですが、つまりは「本当は感染していても約30%の人は感染なしとして見過ごされ、本当は感染していない人の1~数%は感染ありという誤った診断を下されてしまう」ということになります。これは、治療を含めた臨床の場や感染者の行動制限や隔離の点で大きな問題となります。繰り返しになりますが、PCR検査の結果が陰性であったとしても約30%は陽性の可能性があり安心はできませんし、この偽陰性の人が人ごみや街に行き他者と接触すれば市中感染が広がることになりかねません。

この様にPCR検査に対しては偽陰性や偽陽性の問題がついて回わるという検査における限界を知った上で望むことが重要となり、陰性の結果であったとしても人にうつさないことを念頭においた行動が必要となります。