「お父さん(お母さん)はコレステロールが高いから卵はあまり食べちゃいけないよ!」今や家庭などでよく聞く会話ですね。
「コレステロールの摂り過ぎは体に悪い」は現日本人の共通認識に成長したとも言えますが、2015年、日米政府は食事から摂ったコレステロール量と体内のコレステロール値との関連を示すには科学的根拠が不十分とし、これまでのコレステロール摂取制限を撤廃しました。これを受けメディアは「コレステロール制限無用、卵は何個食べても大丈夫!」などと大きく報道しました。
これはどういうことでしょうか?コレステロールは善?悪?体に必要な大切な栄養素?どう解釈すればよいか混乱してしまいますね。少し整理しましょう。
*食事から摂取するコレステロールが血中のコレステロール値を大きく高めたり、心筋梗塞などの発生率を高めたりするデータは得られていない。
*コレステロールはその7~8割が肝臓など体内で合成され、食事からの摂取は2~3割にすぎない。
*食事で摂り過ぎれば体内合成量を減らし、摂取量が少なければ合成量を増やすなどの調節機構が働く。
*食事からのコレステロール摂取は吸収率やその影響の度合いは遺伝的要因もからみ、かなり個人差が大きい。
よって、「少なくとも健康な人に対して一律にコレステロールを制限する理由は無い」となります。
しかし、摂取基準が撤廃されたことで健診などでの血中コレステロール値がどうなってもよいというわけではありません。
日本では血中のLDL(悪玉)コレステロールが高値となる高コレステロール血症の人が増加していて、日本人死因の第2位の心血管病の要因となっています。
LDLコレステロールが高いと狭心症や心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まることは膨大な数の論文や調査結果で示されています。
余談ですが、水泳の北島康介選手のライバルだったノルウェーのオリンピック選手ダーレ・オーエンは26歳の若さで動脈硬化による心筋梗塞で急死しましたが、
家族性高コレステロール血症で血中LDLコレステロール値が非常に高かったそうです。
日本人はそのライフスタイルの変化により、コレステロール値が年々増加していてLDL(悪玉)コレステロールが高すぎる、あるいは、HDL(善玉)コレステロールが低すぎる、などの「脂質異常症」の成人は約2,300万人に達し、既に欧米を超えているとも言われます。勿論、コレステロールは体にとって必要な栄養素です。薬などで過度に下げることによる健康被害もあり十分に注意しなければなりません。まずはご自身の悪玉・善玉コレステロール値をちゃんと把握し、必要に応じ医師と共に適切に管理して行くことが重要と言えるでしょう。