健康診断はその結果を受け取るまで、学校の通信簿のようにドキドキするものです。但し、結果の見方が難しかったり、特に血液検査に関しては数値の羅列で分かりにくいかもしれません。健康診断で行われる血液検査には、その目的により様々な項目があります。今回は慢性成人病である脂質異常症(高脂血症)・糖尿病と血液検査数値について説明します。
<脂質代謝を調べる項目>

総コレステロール(TC) 基準値 120~220mg/dl

コレステロールは細胞膜やホルモンをつくるうえで大切ですが、血中コレステロール値が基準値より高いと「高コレステロール血症」と診断されます。放置すると動脈硬化が進み虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳梗塞などを起こす危険性があります。多くは食べ過ぎや運動不足によって起こりますが、糖尿病・甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群などが原因となる場合やステロイド剤使用の副作用として起こることがあります。一方、基準値より低値の場合は、貧血・栄養不良・甲状腺機能亢進症・肝臓病などが疑われます。

HDLコレステロール(HDL-C) 基準値 40~70mg/dl

HDLは善玉コレステロールと呼ばれ、血中の余分なコレステロールを回収して肝臓に運び戻し動脈硬化を防ぎますが、喫煙や運動不足などで低くなることがあります。基準値より低い場合は「低HDLコレステロール血症」と診断され、総コレステロールやLDLや中性脂肪が正常でも動脈硬化が進み、高血圧症・虚血性心疾患・糖尿病・肝硬変などが発生しやすくなります。

LDLコレステロール(LDL-C) 基準値 70~139mg/dl

LDLは悪玉コレステロールと呼ばれ、脂質代謝の中で特に重視される項目です。基準値より高いと「高LDLコレステロール血症」と診断され、血液中で酸化され血管壁に付着し動脈硬化を促進してしまいます。その結果、虚血性心疾患・脳梗塞・糖尿病などが起こりやすくなってしまいます。

中性脂肪(TG) 基準値 50~149mg/dl

中性脂肪(トリグリセライド)はエネルギー源として利用されますが、余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。基準値より高いと動脈硬化が促進され、脂肪肝や急性膵炎の原因になります。中性脂肪は食事との関係性が強く食べ過ぎは中性脂肪を上げる最大の原因です。糖尿病・甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・肝疾患などでも高くなる場合があります。基準値より低い場合は甲状腺機能亢進症や栄養不足が疑われます。尚、中性脂肪は食後に検査すると検査値が高くなるので、検査の12時間前から絶食することが望まれます。

<糖代謝を調べる項目>

空腹時血糖(BS) 基準値 70~109mg/dl

空腹時に血液中に含まれるブドウ糖の量を調べます。一般に検査前日の夕食後から絶食し、当日朝食前の空腹時に検査します。基準値を上回る場合は糖尿病のほか、甲状腺機能亢進症や膵炎を疑います。また、空腹時や食後にかかわらず任意の時間に調べる随時血糖検査で、血糖値が200mg/dl以上の場合も糖尿病が疑われます。空腹時血糖が110~125mg/dlの場合は境界型糖尿病と診断されブドウ糖負荷試験などにて更に詳しく調べます。基準値より低い場合は、副甲状腺機能低下症・肝硬変などが疑われます。

HbA1c  (NGSP) 基準値 4.6~6.2%

HbA1c(へモグロビン・エイワンシー)は赤血球のヘモグロビンAと血中のブドウ糖が結合したものです。前記の血糖検査では採血した時点での血糖値しかわかりませんが、HbA1cは採血日前の1~2カ月間の血糖の状態を推測することが出来ます。そのため、HbA1cは糖尿病の確定診断の指標となり、また、採血日前の1~2カ月間の糖尿病(血糖値)の管理状況の観察に役立ちます。
以上ですが、もしも脂質異常症・糖尿病と判定・診断された場合でも数値の程度や他疾患の有無などにより治療の必要性や治療方法ははその方により様々ですので医師(主治医)とよく相談しましょう。
因みに糖尿病と尿検査では

尿糖(US,UG) 基準値 陰性

尿中に糖が出ているかを調べます。陽性の場合は糖尿病が疑われます。但し、尿中に糖が出るようになるのは血糖値が160~180mg/dlを超えたころからなので、糖尿病でも初期には尿糖が出ない場合があります。一方、健康な人でも検査前に食事を多くとったりすると陽性になる場合があります。