「フレイル」や「サルコペニア」といった言葉を聞いたことがありますか。
超高齢社会に突入した現在の日本では、自立して暮らせる期間⇒「健康寿命」がキーワー
ドとなります。元気なお年寄りが増えているとはいえ、この健康寿命は従来の何歳まで生
きるか⇒「平均寿命」と比べ、女性は約13年、男性は約9年短いという調査結果が出ていま
す。これは死を前にしてのその年数は介護を要する状態であることを意味します。
長寿国世界一の日本において、健康寿命を延ばすとともに介護を要する期間をいかに減ら
すかは重要課題であり、その取り組みを世界中が注目しています。
近年、この状況に対し老年医学の分野から「フレイル」という概念が提唱されました。
「フレイル」とは、高齢期に加齢に伴い様々な臓器機能の変化や生理的予備能の低下によ
り外的ストレスへの耐性が低下し、種々の健康障害に陥りやすくなった状態のことです。
すなわち、通常の日常生活を送ることができる身体機能があるにもかかわらず、加齢をは
じめとして、持病、低栄養、環境の変化、不活発な日常生活、社会参加の欠如などによる
(軽微な)ストレスを引き金に要介護状態に陥ってしまうといったイメージです。
加えて、フレイルは単に不可逆的に老い衰えた状態だけでなく、しかるべき介入により再
び健常近くに戻る可逆的な状態も含みます。言い換えれば、フレイルは自立した生活を過
ごしている高齢者と要介護状態の高齢者の中間的段階を指し、疾患や転倒・骨折などによ
り要介護状態になることもあれば、適切な予防や介入により自立した生活に戻ることもで
きうる可逆的な状態のことです。
また、要介護状態となるきっかけは身体的な問題だけではありません。精神・心理的問題
や社会的問題も大きく関与し影響を及ぼします。具体的には、認知症や老人性うつなど、
地域社会との関りがなくなる社会的孤立や独居の問題、経済的困窮などです。
フレイルは身体的要素に加えこれらの精神・心理的要素や社会的要素も含め、3つのフレ
イルから高齢者の生活機能全般の低下を包括する概念です。
こうしたことからフレイルは、高齢者の状況を多面的にとらえ生命や機能予後を推定し包
括的な医療を行うことや、早期に適切な介入をして高齢者の健康維持や要介護状態を予防
するうえでも重要かつ必要な概念として注目されています。
次回はフレイルについての続きとサルコペニアについてです。