フレイルは英語のFrailty(虚弱・老衰)をもとにします。前回はフレイルの主に概念についてのお話をしましたが、フレイルの提言作成に関わった虎ノ門病院の大内尉義院長は「虚弱や老衰には元に戻らない印象があるが、フレイルにはなりかけても元に戻るという予防の意味がある」としています。またフレイルには身体的だけでなく、精神心理的、社会的フレイルがあるが、超高齢社会を迎え最も大きな問題となるのが身体的フレイルです。

フレイルの診断基準には5項目あります。
1)体重減少(1年で4.5㎏以上自然に減少)
2)筋力低下(握力が男26kg女18kg以上が正常)
3)易疲労感
4)歩行速度低下(1秒間80cm、1分48m以上が正常)
5)日常生活活動度の減少

このうち3項目以上に該当すればフレイル、1~2項目に該当する場合プレフレイルと診断します。診断では特に筋肉が重要とされますが、加齢に伴う筋肉量の減少や筋力低下をサルコペニアといいます。
フレイルもサルコペニアも高齢者の生活機能を低下させ介護者の負担まで増大させてしまいますが、両者とも習慣的な運動や正しく栄養を摂ること(筋肉を作るのに欠かせないたんぱく質・カルシウム・ビタミン・ミネラルなど)により予防可能と言われています。
歩行に関した研究では、認知機能の低下に先行して歩行スピードが低下するという報告や、週3回以上の早歩きを行う高齢者は認知症発症のリスクが低いという報告もあります。
また、罹患している疾患の適切な治療は当然のことではあるが、近年高齢者の多剤服用の悪影響も言われており、6~7種類を超える服用には見直し検討が必要な場合もあります。精神心理的、社会的フレイルの予防には趣味の活動や周囲との交流、社会的役割の維持も大切です。最近は介護保険を始め高齢者への各種サービスの環境も整いつつあります。可能な範囲内で普段の生活の活動性を維持し、習慣的な運動や適切な食事で健康を意識することが重要となります。